「・・・やったわい、遂に完成じゃ。念願の魔法が完成したのじゃ。思えば苦節20 余年、苦心した甲斐があったというものじゃ・・・」 老魔法使いはたったいま完成した呪文を羊皮紙に急いで書き写し、誰でもがつかえ るように発音記号までつけた。 さて、この魔法、どんな魔法かというと、一口に言って「バリアー」なのだ。バリ アといってもこれは強力で、術者の周りに連続的に衝撃波を飛ばし、半径3メートル 以内にあるモノをすべてはじき飛ばしてしまうという、いわば「結界」である。 老魔術師はこの呪文書を複製し(もちろん魔法でだ)、強力な魔法ということで全国 有名書店(魔法屋?)に高く売って回った。攻撃にも防御にも使えるというふれこみで ・・・。 数日後、駆け出しの冒険者が書店(魔法屋)でこの呪文書を買い、さっそうと洞窟へ 探険に行った。「へへっ、これならマスターの無理すぎる「ワンダリングモンスター 連続出現」からも逃れられるぜ」などと意味不明なことをつぶやきながら・・・。 はたして、彼が呪文書をひもとく時がやってきた。彼は10数匹のリザードマンに囲 まれてしまったのだ。いそいで呪文を唱え、効果を待つ。その途端、彼はいままで体 験したこともない激痛に見舞われた。全身の血液が沸騰し、息ができない。彼はその まま絶命した。
この呪文には重大な欠点があった。 「空気すらもはじき飛ばすなんて思わなかったんじゃ!!」 老魔術師は姿をくらました。
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