|
|
「おばさーん、A4版の画用紙まだ残ってますか?」 不意に後ろで響いた綺麗なボーイソプラノに、ミセス・アサンテは振り返る。そこにはいつも通りに、小柄な少年の姿があった。
- 「おやフリック君、いつも大変だねえ。買い物の帰り?」
- 「はい。みんなホントに良く食べるから作るこっちが大変ですよ、全く」
細いその腕に抱えられた買い物袋からは、オレンジ色の棒状の物体が数本突き出ている。人参であろうか。はっきり言って、彼の繊細な美貌には不釣合いなことこの上ない。
- 「はい、お釣りはおまけしとくよ」
- 「え、ホントですか?らっきー♪」
彼は雪解けの中から緑の新芽を見つけたような笑顔を浮かべた。- 「ただいまぁ」
- 「お帰りなさぁいお兄ちゃん!」
- 「……遅い」
走り寄って来る妹の頭を撫で、文句をつける相棒の背中に向かって舌を出してから、彼は買って来た材料を冷蔵庫の中に詰め始めた。肉だけは保存食にするために天上から紐で吊るしておく。- 「やっほー、元気ぃ?」
声を掛けて来たのはもう一人の冒険仲間、シュティであった。- 「いい加減、窓じゃなくてドアから入って来たらどうだよ?いくら隣に住んでるからって」
- 「いーじゃない、減るもんじゃなし」
- 「いや、減ってる」
- 「何が?」
- 「僕の時間。ほら、夕食の仕度の邪魔だから退いた、退いた!」
その日の夕食のシチューをすっかり平らげてしまい、後片付けを始める。当然それもまたフリックの役目である。 - 「ったく、こういうのは当番制にすりゃあ良いのに……よっ、と」
しかし、いやいややっているはずのこの皿洗い、何故か彼の表情は楽しそうである。何だかんだ言って、こういう作業は嫌いではないらしい。 と、皿を拭く手がぴくりと震えた。窓の外で息をひそめる何者かの気配を感じ取ったのだ。 エプロンのポケットから何か小さな物を取り出し、しゅっ、と放り投げる。ぶしゅ、という美的でない音が響いた次の瞬間、その気配は消えた。- 「どーしたの、お兄ちゃん?」
- 「何でもないよ、平気」
こうしていつも通りに彼の一日は終わる。彼の家のそばで、ナイフが脳天に突き刺さった黒ずくめの男の死体が発見されるのは、その次の朝のことになる。
|
|
結構、診療所のベッドの上でずっと寝込んでることが多かったようですね僕のキャラのばあい・・・^_^; あと、僕たちの仲間は、町のどぶ掃除(バイトで・・)とか、泊まってる所で皿洗いなんかしてます。 僕は、けがをしていなかったら、近くの森なんかでのんびりしながら薬草とったり、散歩したりしてると思いますよ?(でもマスタ−が意地悪して、そんな時に事故とか、なんかと遭遇してけがなんかしたりして・・^_^;
|
|
ブレイズアンドブレイドリプレイティオの冒険記 赤竜を倒した次の日の朝 から抜粋。
いつもどおりの朝。大きな窓枠から差し込む眩しい陽射し。今日も良いお天気。 ティオは、キッドの宿屋の大階段を駆け下りた。昨日の興奮がまだ身体の奥に残ってる。 「おばちゃーん、おっはよーっ」 「あらあら、ティオちゃん。おはよう。ほかのみんなは未だ寝てるのかい?」 「うん。マックスとアルディーとチェインとピアスはお酒飲み過ぎで爆睡中。 マリアは回復魔法の使いすぎでへたばってるんだ。」 (注、本来このゲームは最大四人パーティー。マックスは男ファイター、アルディーは男シーフ、チェインは女ハンター、ピアスはフェアリー種の男精霊使いで、マリアはプリーステス。 なお、主人公ティオは女ウィザード。と言う設定。一応ティオの冒険記中のみ6人パーティーって事で。) 「あらまあ。それじゃ後でハーブティーでも入れてってあげようかねぇ。」 「わー、それじゃあボクはお砂糖いっぱいいれてねっ。」 (注、ハーブは本来はハンター専用の回復アイテム使用スキル) そのままティオは階下のバーに飛び込んだ。昨日手に入れたお宝を誰かに自慢したかったのだ。 「んふふふふー、みてみて、マスター」 「お、どうしたぃ?やけにご機嫌じゃないか。」 「ほら、こないだ赤竜を倒したときに分捕ったお宝、さっき鑑定屋さんに鑑定してもらって来たんだけど、 一体何だったと思う?」 「んー、こりゃ俺も見たこと無いアイテムだなぁ。」 「ふっふっふー、これはっ、何とあの伝説の魔法杖バハムートなのだーっ。」 (注、バハムート−神竜がその力を認めた魔法英雄に授けたと言う曰く付きの伝説級アイテム。) 「ほー、凄いじゃないか。」 「えー、なんだぁ、それだけ?もっとビックリすると思ってたのにぃ。」 「ってもなァ、俺は魔法の道具にゃそんなに詳しく無いからよ。」 「ちぇっ、いいもん。ローレンさんならきっとこの杖の値打ちを分かってくれるよねっ。」 (注、ローレン−キッドの酒場にずーっと泊まっている超美形吟遊詩人。このゲームの人物の大半は名前が不明の為、かりなが勝手に命名。ちなみに、酔っぱらいドクターがセクハラかまそうとしてる彼、男である。) 吟遊詩人や仮面の戦士達が良く飲んでるサンルームに向かうティオ。 その後ろ姿を見ながら、マスターはふと昔の事を思い出していた。(注、マスターは嘗ては腕利きキッドと言う冒険家だった。) 〔こないだまで、只のひよっこだったくせに、まさかあの赤竜を倒しちまうとはなぁ。〕 そんなことを考えながら、ついつい苦笑してしまう。 〔いーや、俺だってまだまだ若いんだぞ。〕 そういうことを考えてしまう事自体が老け始めなのかも知れないが。 階上からどたどたと足音が近づいてきた。 マックス達がようやく起きてきたようである。 「マスター、おはよーさん。」 「おー、やっと起きたか。もう昼前だぞ。」 言いながらそれぞれの卓の上にもうお馴染みになった『いつものやつ』を置く。 「で、今度は何処に行く気だ?」 「そーやねぇ、行ける所は全部行ってしもたしなぁ。」 (注、チェインは大阪弁を喋っているが、本来このゲームで大阪弁を喋るのはバスターズ体験版のダークウィザードのみ。次回作がもし有るのなら、ぜひ大阪弁口調の設定が出来る様にして欲しいなあ。あと、何々にゃあ、の猫言葉も。さらに、ティオはロリ口調、アルはカッコつけ口調、ピアスは下っ端口調。=当然ゲームには無い。マックスとマリアは普通のゲームに有る熱血口調と丁寧口調に設定。) 「ふ、マスター、その顔は何か耳寄りな情報が有るんだろ?」 「あら、そうですの?マスターさん。」 「良く分かったな、アル。」 「まああんたとの付き合いもそろそろ短くは無いからな。」 「それでっ、そのお宝ザクザクの遺跡ってのは何処なんだっ!?」 「ちょ、ちょっと、マックスさん、だれもお宝がザクザクなんて言ってないですよぉ。」 「もー、何でもええからケチケチせんとはよ教えてーな。」 「まーまー、そう焦らなくても教えてやるよ。実はな、最近発見された遺跡なんだが、先魔導文明紀の遺跡らしくてな、場所は−」 『ああああああああああっっっ、ボクのバハムートがあああっ!!?』 宿屋全体に響き渡るティオの叫び声。 『あ、あははは、大丈夫、ちょっと魔宝玉が外れただけですよ、ほら、ここをこーすれば−』 ばきょっ 『@&%£§☆$♀℃∞〜〜〜!!!?』 『あれ、ここをこう−』 めきっ 「ローレンさんって、以外と力持ちさんなんですね…。」 「なあ、あれってワザとボケとるんとちゃうやろか。」 「さあ…?」 「あーあ、こりゃ出発は明日までお預けだなあ、お前ら。」 「そうみたいですね…。」 「しゃあねぇ、今日はまた一日酒を飲み明かすか。」 今日も一日冒険者。忙しいヤツも居れば、暇なヤツも居るけど、ここキッドの宿は今日もいつも通り平和である。 『ちっとも平和じゃないよ〜!ボクのバハムートォォォォォ〜〜〜!!!』 ティオの休日はこんな感じみたいですにゃ。
|
|
信仰を失った土地神を殺すのがオレの仕事。 1人でできる仕事じゃないんで、仲間は大切だ。 だから仕事が一つ終わるたびに、俺達は死んだ仲間のために乾杯することにしている。 仲間はどんどん死ぬから、呑み干す盃も増える。そうすると、しまいには乾杯を終わらせるだけで夜が明けちまう。 それじゃキリがない、そう思うだろ? ところがある日、パッタリと乾杯する量が少なくなる。 そりゃそうさ。乾杯する奴らだって、いつかは乾杯される側に回るんだから。そんな時は、オレ1人が全員分の乾杯を済ませて、次からは新しい仲間達と乾杯のやり直しさ。 自分の知らない相手のために乾杯していたら、それこそ夜が昼になっても終わりゃしない。顔ぶれがガラリと変わったら、一からやり直すことにしている。
そんなわけで、今日は新しい仲間達と「これから死ぬ奴ら」に乾杯だ。
|
|
冒険を終え聖都の門をくぐった5人パーティは南広場で一度足を止めた。 紅一点の精霊使いが全員の顔を見渡す。 「さて、皆、これからどうする?」 すでに冒険の分け前は渡してある。 精霊使いの台詞を受けて、少年神官がぺこりと頭をさげた。 「僕は一度神殿に戻ります。上司に今回の報告をしなくてはいけませんから。あと幾分かの浄財もね」 盗賊がそれを聞いて相づちを打つ。 「やば。オレも盗賊ギルドに、ツケてた会費を納めに行かなきゃ。あとは合い鍵に錆止め塗って、ランタンの芯も取り替えて油を補充して、皮鎧のほころび繕って、汚れた衣類を洗濯屋にまわして……」 ほかにも補充しなくてはいけないものがあるのか、あれもこれもと思いを巡らせていた。 戦士は埃だらけの顔をぬぐった。 「俺は風呂行ってー、刺絡してー、あとは酒場で飲んで喰って、きれいなねーちゃんと……おっと」 目の前にいるのが女性だということに気づいたのだろう。口を押さえた。もっとも精霊使いはそんなことに頓着するような性格ではないので笑って聞き流す。 目くじらを立てたのは黒っぽいローブを身にまとった魔術師だった。戦士の耳をつまみあげる。 「いででででっ!?」 「なーに馬鹿なこと言ってんだ、テメエはよ。テメエの行き先は鍛冶屋。武器防具の買い換え・手入れは基本だろーが、馬鹿たれ。風呂はその次」 「そういうお前は、物見の塔へ報告に行かなくていいのかよ!」 「ふん。報告の義務なぞない。あとで情報収集にゃ行くけどな。今回拾ったスクロールも調べなきゃならんし……そいじゃお前ら、また夜にな」 夜はいつも馴染みの酒場で酒盛りだ。魔術師はそのまま大柄な戦士をずるずると引きずっていった。実は魔術師のほうが強いかもしれない。 「じゃ、またあとで」 精霊使いは手を振って見送った。
その後、彼女はパーティを離れて、小さな宝石商の店へと入った。 「いらっしゃいませ。おお、これは」 店主は精霊使いの顔を覚えていた。 「こんにちは。頼んでいたものは?」 「ええ、ご用意できていますよ」 店主が奥から出してきたのは大粒のルビーをあしらった首飾り。精霊使いはあまり欲しいものがないので、稼いだ金はこうやって宝石と交換していた。 冒険者がその荒っぽい毎日の中、どうやって宝石を管理しているのか? 彼女には優秀な「管理人」がついているのである。
「おかえりなさい!」 宿に戻ると妹が迎えてくれた。 「はい、おみやげ」 「わ、今度はルビーなのね!」 踊り子の妹は嬉しそうに首飾りをつけた。町で踊って収入を得ているのである。こういう後方支援もまたパーティを支えてくれているのだ。 今日も無事に帰ってこられたと、精霊使いはほっとして疲れた体を横たえた。
|
|