厨房「白昼夢」 - 明日の行き先 #3
陽射し亭から歩いて近い「どこか」に在ると言われている厨房では、 レプラコーンのコックが奇妙な食材を用いた不可思議な料理ばかり作っているという。 あまりにも珍妙な発想に全てが即興なのではないかとも言われるが、そこ辿り着いた者の 証言に依ればメニューもあり対価も決まったレストランが開かれており、 レパートリーも確実に増えているという。 間違い無く今も「どこか」で新しい料理を嬉々として発明しているのだろう。 尤も、そこを訪れようという者は、ただ金だけを持っていくのだけではいけない。 何せ、あらゆる世界から訪れる客を向かえる店だ。共通の金などある筈もない。 そこで、支払いは食材や労働でする事になる。 出来るだけ稀有な珍獣奇獣を持っていくことだ。さもなくば、とんでもない用事を 言いつけられる事になるかもしれない。おっと、逃げるなどという考えは起こさない 方がいい。幻獣・魔獣を食材にするこのコックの魔力は決して低くない。そして、 料理を食うことは即ちコックと支払いの契約を交わす事に他ならないのだ。その後 生涯、食べたものが全て漬け込み過ぎのしめ鯖の味になっても、責任は持てないぞ。
|